■果無山脈の東の雄を石地力山とすれば、西の雄は笠塔山ではないかと勝手に考え、1年前に石地力山に登ったので、今度は笠塔山に登ろうと思った。■笠塔山の登山道はいくつか知られている。一つ目は、谷口から笠塔山の北側の尾根に登り上げるコースである。古いガイドブックに掲載されているが、途中に山抜けや伐採地があり、現在は不明瞭のようである。二つ目は、谷口からさいの谷林道の終点まで行き、笠塔山の西側の尾根に登り上げるコースである。古いガイドブックで下山道として掲載されていたが、林道終点から尾根に上がる途中で虎ケ峰坂泰林道により分断されてしまっていて、現在は使われていないようである。三つ目は、笠塔山の南側の笠塔森林公園から登るコースである。これも古いガイドブックで紹介されているが、2006年7月の集中豪雨のため、遊歩道が数か所で崩壊、浸食により通行不可能となり、その後も大雨等によって多くの箇所で遊歩道が寸断され、壊滅的な被害を受けていて、笠塔森林公園自体が入園禁止になっているとのことである。一つ目のコースの往復が一番無難なように思えたが、いずれのコースも歩く人はあまりいないようで躊躇していた。■そうした中、ネット上で見かけた和歌山森林管理署の「令和3年度坂泰山国有林・笠塔山国有林銃猟禁止区域」という資料により、2万5千分の1地形図に記載されていない林道が笠塔山の東側の尾根の近くまで伸びていることが分かった。この林道は虎ケ峰坂泰林道と言い、本宮龍神林道から分岐し、笠塔山や持平山を巻いて虎ケ峰の方へ続いている。また、和歌山県の果無山脈県立自然公園の案内マップには、虎ケ峰坂泰林道から笠塔山の東側の尾根を通って笠塔山に至る登山道の記載がある。今回は、車で丹生ノ川沿いの加財から本宮龍神林道に入り、途中から虎ケ峰坂泰林道に進んで行ける所まで行き、そこから歩くことにした。■本宮龍神林道と虎ケ峰坂泰林道の分岐には「全面通行止」と書かれた看板とバリケードがあったが、脇を通り抜けて進入した。■未舗装の林道をしばらく行くと、途中で堰堤の前を2か所通過した。2番目の堰堤の周辺は広くて車を停めることが可能だったが、もう少し入ることができそうだったので、先に進んだ。2番目の堰堤から道は細くなり、落石も多く路面状態は良くなかったが、走行は可能だった。■少し行くと、林道が右に折り返すようにカーブする所で左側に広いスペースがあったので、そこに車を置いて出発することにした。そのスペースは、奥の方の堰堤の工事のために人工的に整地されたものではないかと思った。■駐車地点から林道を登っていく。歩行には問題ないが、路面状態はますます悪くなり、落石や法面が崩れている箇所もある。現状では車の通行は困難と思われ、先ほどのスペースに車を置いて正解だった。■しばらくの間、振り返ると冷水山や牛廻山方面の眺めが良いが、やがて森の中を行くようになる。■駐車地点から30分くらい歩くと、標高764m地点と標高872m地点を結ぶ尾根を回り込んだ。「笠塔山国有林」と書かれた看板があり、標高762m地点の方に作業道が分かれ、標高872m地点の方には尾根に上がる梯子があった。■「笠塔山国有林」と書かれた看板から10分ほど行くと、2万5千分の1地形図に記載されている林道の終点に達するが、実際には林道は先に続いていて、標高872m地点の西側付近で右に作業道が分岐する。ここにも左の尾根に上がる梯子が付けられていた。■さらに5分くらい進むと、再び右に作業道が分岐する。この辺でようやく樹間に笠塔山が姿を現した。■標高925m地点の南側は切り通しになっている。ここまで尾根の右側を歩いてきたが、ここで尾根の左側に出た。■切り通しから少し行くと、右側の尾根が低くなり、左側の尾根は高くなって、林道が尾根を斜めに横切るような形になっている。ここが笠塔山頂上への登り口だった。目印のようなものもあり、ここから左側の尾根に取り付いた。最後の作業道を分けた後、ここまで15分くらいだった。■林道から離れて尾根に乗ると、森の中に踏跡が続いていて、これに従って登っていく。■林道から15分ほど登って谷口方面からの山道を合わせると、笠塔山頂上に到着した。■笠塔山頂上は広く、古い標識や三角点があった。三角点の南側には、大きなアンテナが建っていた。何も書かれていなかったが、警察の無線中継所らしい。三角点付近は木々で覆われていて眺めが無いが、アンテナ付近からは西方の持平山、足立山、虎ケ峰方面を望むことができた。アンテナの南側の森の中には、剥げてしまって何が書いてあったのか分からない壊れた看板や目印があり、おそらくここから笠塔森林公園方面や持平山方面への踏跡が分かれているのだろうと思った。その後、笠塔山頂上でしばらく休んだ後、元来た道を戻った。■笠塔山は、その山容から登る人が多そうな山に思えるが、実際はあまり登られていないようである。頂上にアンテナが建っていたり、頂上の近くを林道が通っていたりするのは趣きがないが、登山道が整備されていないことやアプローチの不便さなどから静けさが保たれているようである。■今回はとても楽をしてしまったが、果無山脈の西の雄に登頂できて満足だった。(2022年10月10日記載)
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