■大塔山は、大塔山系の最高峰である。頂上までいくつかのコースがあるが、今回は最も短時間で登頂できるコースとして、安川林道から登ることにした。■安川沿いの最奥の民家を過ぎると、道は安川大塔川林道に入る。■安川渓谷沿いに車で進み、宗小屋橋で右に分かれる安川林道に入る。すぐに法師山の登山口を見て、奥へと進んでいく。■安川大塔川林道は舗装されているが、安川林道は未舗装で細くて路面状態も悪く、四輪駆動車以外の車は進入しない方が無難と思われる。■しばらく進んで右に下って赤い橋を渡った所が大塔山の登山口で、近くの路肩に車を停めた。■橋を渡ってすぐ左に登山道があるので、「大塔山 登山口」と書かれた標識に従い、ここから入山する。「熊出没注意!」や「ナンキセダカコブヤハズカミキリムシを採らないで!」と書かれた貼紙もあった。■ナンキセダカコブヤハズカミキリムシは、和歌山県固有の昆虫で、大塔山の生息地が和歌山県指定文化財(天然記念物)に指定されているそうである。■登山道に入ると、すぐに左に古い堰堤を見る。「昭和62年度 水源地域緊急整備事業」と書いてあった。■堰堤からしばらく左右にカーブしながら登っていき、10分ほどで尾根に乗った。植林の中を尾根に沿って登っていく。■途中で何に使う物か分からないが、水が貯えられた大きなたらいのようなものがあるのを見た。■林業用の作業道と思われる山道が数か所で分かれているが、いずれも尾根がら外れていくので、尾根上を進んでいけば問題ない。■登山口から1時間くらい登ると、標高905m地点に着いた。ここで法師山方面からの道と合流する。■途中に尾根が痩せている箇所や足元から切れている箇所、木の根を掴まりながら登る箇所もあるが、やがて自然林の稜線を行くようになる。徐々に積雪が現れた。■安川林道から標高841m地点を経由するコースと合流し、10分ほどで標高1058m地点に着いた。この付近から左側が再び植林となる、■大塔山は双耳峰であり、標高1058m地点は一ノ森や下川大塔と呼ばれるピークであるが、「一ノ森」と書かれた私製の標識が立木に付けられているだけであった。標高905m地点から一ノ森まで40分くらいだった。一ノ森から樹間に大塔山が見えるが、だいぶ遠くに感じる。■一ノ森から大タワと言われる鞍部まで約80m下る。10分ほどだった。一ノ森を過ぎると積雪が増えた。足首くらいの積雪で、意外と滑り、アイゼンやスパッツを持ってくれば良かったと思う。雪上には大型動物が歩いた跡も見られた。途中で弘法杉からの道が合流しているようだが、分からなかった。■大タワから大塔山頂上まで約150m登り返す。振り返ると、一ノ森がだいぶ大きな山に見えて、帰りが思いやられる。積雪がある上に途中急な箇所もあり、時間がかかった。■大タワから20分くらい登ると、左側にネットの柵が現れ、少し行くと行く手が柵で塞がれていた。良く見ると、ネットをひもで縛って塞いであったので、これを外してすき間を作って通過した。そのすぐ先が大塔山頂上だった。■大塔山は二ノ森とも言われ、大塔山の最高点である。標識や三角点、「大塔山の山頂保全について」と書かれた看板があった。大塔山頂上は、ススキのヤブで覆われていて、周囲の眺望もない。■大塔山頂上周辺には本州最南端の貴重なブナ林があるそうだが、1998年に誤って伐採されたそうである。当初はすぐに元に戻るだろうと予想していたが、シカなどによる食害や風による乾燥化などが原因となり、草原化が進んだそうである。これにより、風が吹き込み、林床灌木が消失したことに加え、ブナの巨木の枯木が目立つなどブナ林が弱ってきたため、幼木をシカの食害から守るための防護フェンスと風の吹き込みによる乾燥化を防ぐための防風ネットを張ることにしたそうである。見晴らしは悪くなるが、自然を守るための施設なので、理解してほしいと看板に記載されていた。以前は眺めが良かったそうだが、現在は放置せざるを得ないようである。■しばらく大塔山頂上で休憩した後、元来た道を戻った。■山中では人に会うこともなく、静かな山歩きを楽しむことができた。登山口には自分の車だけが停めてあり、他に人が来た形跡も認められなかった。■安川林道は狭くて片側は崖になっているので、帰りも慎重に運転する。対向車は来ないだろうと思っていたが、途中で地元車と思われる軽トラックが突然前方から現れた。たまたま広い場所だったので、すれ違うことができて安堵する。路面状況からまさか通行する車があるとは思っていなかったが、荒れていても地元の人達には利用されている道なのだと思った。■大塔山は他のコースからも登ってみたくなったが、とにかく遠い山であるので、いつになるか分からない。■今回、足郷山経由のコースも考えたが、その場合は体力的におそらく一ノ森を往復する余裕は無かったと思う。今回は一ノ森と二ノ森の両方に足跡を残すことができて良かった。(2024年10月26日記載)
|